「やけに静かですね……」
「譜歌の効力もあるでしょうが……大方は人が死んだからでしょう」
「それもこっちの……マルクト軍の兵士だろうな」
ジェイドの言葉にが付け足した直後、ガシャン、と何か崩れたような音が廊下に響き渡った
「?!」
「何の音?!」
立ち止まり、三人は顔を見合わせる
「後ろからだったな」
「しかし、誰もいませんが――」
一瞬間が空いて、
『ルーク?!』
言葉が重なり、半分ほど過ぎた廊下を三人は逆走した








「人を殺すことが怖いなら剣なんて捨てちまいな!この出来損ないが!」
扉を開けるなり響いた怒声に、は身を固くする
「ルーク!」
ティアが腰を抜かしているルークに駆け寄り、ジェイドとが敵と対峙する
「ちっ――くらえ!」
目の前の男――炎のように赤い髪を持ったその男は、こちらを見るなり露骨に舌打ちし、手をかざして譜術を発動させた
「っ!」
間一髪のところではそれをかわすが、ルークとティアは避けきれずに被弾してしまう
「くっ……」
「ルーク!ティア!」
叫ぶの傍らで、ガタン、と音を立ててジェイドが膝をつく
「ジェイド!」
「すみません……少し、遅かったようです」
苦々しげに呟くジェイドを見て、はぎり、と奥歯を噛み締める
「ほう……さすがだな。随分しぶとくていらっしゃる」
にやりと残忍な笑みを浮かべ、赤い髪の男は言葉をかける
「死霊使いに……おまえは、いつぞやの傭兵か」
だ。名前くらい覚えておいてくれ。
――六神将“鮮血のアッシュ”」
奥歯を噛み締めたまま無理矢理笑みづくり、軽く言葉を返す
「ふん……何故ここにいる」
「仕事に決まってるだろ?
――悪いが、今回は敵だ」
すらりとは腰の双剣を抜く
「いいだろう。まとめてあの世に送ってやる!」
赤い髪の男――アッシュも対峙するように剣を構え直した、その直後、


「――アッシュ!その辺にしておけ」


凛とした聡明な声がそれを制止した
「!」
目をやると、切れ長の瞳に金髪を持った若い女性が立っていた
「リグレットか……」
ち、と舌打ちが聞こえる
「その辺にしておけ。閣下のご命令を忘れたのか?
導師が見つかった。そいつらの始末は後回しだ」
リグレットと呼ばれた女性の言葉に、アッシュは渋々剣を退き、
「そこのお前!こいつらをどこかに閉じこめておけ」
近くにいた兵士の一人に荒々しく命じた
「そう簡単に捕まると思ってるのか?」
ぐ、と剣を強く握りしめたに、リグレットは冷淡に言葉を返す
「賢明な判断とは言い難いな“狼”
いくらお前に力があるとはいえ、そこの三人を庇いながらこの場を切り抜けることは不可能だ」
「っ……」
言われずともそのことは承知している
「――」
傍らのジェイドに視線をやると、頷き返された
――この場は従え、と
「……」
は剣を鞘に収め、軽くため息をつく
「どうやら意見が合致したようだな」
「やむを得ん、ってことさ」
「命まで取りはしない。
――まずは、武器を捨ててもらおうか」
指示に従い、は腰の双剣をベルトごと外して放る
がしゃん、と大きな音を立て、ベルトが甲板に落ちた
同じようにルークの剣、ティアのメイスが取り上げられる
「牢屋に連れて行け!」
それぞれ幾人かの兵士に囲まれ、四人は艦内へ連れていかれた













「さて、と……どうしたものか」
船室の一つに鉄格子を嵌めただけの簡素な“牢屋”
たち四人はそこに閉じこめられていた
「妨害はある程度予測していましたが、ここまで激しいとは思いませんでした」
「あぁ。思った以上に厄介だ。
まさか六神将がこんな一度に出てくるとはな」
「まったくです。
……ところで、あなたは彼らと面識があるようでしたが……
少しお話を伺ってもかまいませんか?」
「……以前、仕事で関わったんだ。
総長であるヴァン・グランツとは書類の上でしか面識がないが……
六神将とは一通り会ったことがある」
「確か……六神将は兄さんの部下だったわ」
「兄さん、だって?」
ティアの呟きに、は思わず問い返す
「ヴァン・グランツは私の兄なの
兄さん……何をするつもりなの……?」
「ティアも神託の盾だったな。何も聞いていないのか?」
「ええ。でも、兄は何か良からぬことを企んでいるわ。
だから私は……」
しゅん、とティアの表情に陰が落ちる
「……ところで大佐、この後はどうするんだ?」
話しを切り替えると、ジェイドは一度ルークの方を見やった
ティアはすぐに気が付いたが、ルークはいっこうに目を覚まさない
「……二、三策は考えてあります。
ですが、まずはルークが起きるのを待ちましょう」
「ふむ……わかった」
何となく腰に手をやり、武器を取られたことを思い出す
……何とかして取り返さなければ
そこに考えを逡巡させて、は目を閉じた



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  あとがき
 アッシュ出ましたー。アッス!アッス!\(^0^)/
 ファンダムをやってるとこういうキャラほど笑いの種になります。
 もう一挙一動が笑えてきて仕方ありません
   2008 7 13  水無月