「さて、と……ここからだな」
周囲を警戒しながら、四人は館内を進む
『これが私の頭に入っている大まかな艦内図です』
広げた紙面に走り書きされた図を四人で囲む
『ここがブリッジか……だが、主要の通路はほとんど押さえられてるだろうな』
『そしてブリッジも。……ですが、向こうの兵士もそれほど多くはありません
戦略的に少々不安はありますが、何とか乗り切れるでしょう』
『どうする気だ?』
『ティアの譜歌で極力相手の動きを止めましょう。』
『そうか……俺は実際に見ていないから何とも言えないが……
アンタがそう言うのなら従おう』
『お願いします。
……ルートはここを進みましょう。やや遠回りになりますが一番確実かと』
『わかりました。――いいわね、ルーク?』
『お、おう』
全員の確認を取ると、が最後に提案した
『なら、俺が一番後ろに付こう。大佐が前だ。それでいいな?』
『かまいませんよ
――時間が惜しいです。そろそろ行きましょう』
手短な打ち合わせの後、四人はブリッジを目指し始めた
「……、一つ訊いて良い?」
その途中、不意にティアが口を開いた
「何だ?簡単に答えられる質問なら良いぜ」
「さっきラルゴが言っていた“狼”というのはあなたのことなの?」
「……そのことか、」
ふぅ、と疲れたような呆れたようなため息がの口からこぼれる
「確かに、あの男が呼んだ狼とは俺のことだ。
ケセドニアの方で傭兵をやっているってのは話したな?
それで、知らないうちにどこぞの富豪とやらが勝手にそう呼び始めたんだ」
答えたの瞳はどこか悲しげだった
「“砂漠の銀狼”の噂は何度か耳にしていますよ」
前方からジェイドの声がかかる
「ザオ砂漠を中心とする各地で何人もの命を救い、誰一人として勝ったものはいないという。
常に身に纏っているコートの色と瞳の色に準えて銀の文字がついたそうです」
「“砂漠の銀狼”……?」
「それが俺の二つ名。
ま、人を救ったなんてのは綺麗事だがな。俺は金で雇われてるんだ。
やってる事が事だから、不本意ながら勝手な尾ひれが付いただけだ
――覚えがあるだろ、死霊使い殿?」
わざと話しを振るが、曖昧な微笑みでさぁ?と返された
「……それに、二つ名なんてそんなにカッコのつくものでもない
照れくさいと言えばそうだが、持っていても損得は五分五分だ。
まぁ慣れてるし、そう呼びたければ好きにしてくれ」
口調は淡々としているが、照れたようには視線を逸らした
「……それより、大佐は俺のことを知っていたんだな」
「あくまで噂だけですよ。実際、会ったのは初めてですし」
「まったく……食えないおっさんだ」
「誉め言葉として受け取っておきますよ」
淡々とした口調で言葉を交わす
それは直に止み、無機質な足音が狭い通路に薄く響いた
張りつめた空気を纏う四人を、無機質な鉄の扉が迎えた
「――あれか」
「ええ、そうです。」
扉の手前に立ち、ジェイドはすぐ後ろのルークに話しかける
「ルーク、ここで一度分かれましょう」
「? どういうことだよ」
「ここから先は私たち三人で進みます。
あなたはここで敵が入らないよう見張っていてください」
「……わーったよ」
ちっ、と軽く舌打ちし、ルークは渋々頷く
「大佐。俺はルークの護衛を引き受けたつもりなんだが」
その後方で、が異議を申し立てた
「わかっています。
ですが今、殆どの兵士はティアの譜歌で眠っています。ルークを一人にしても大丈夫でしょう。
それにこの先他の六神将がいないとも限りませんし、残念ながら今の私では戦力にならない。
無事に事を運ぶにはあなたの力が必要なんですよ」
「……」
ジェイドの説明は理にかなっている
「……了解だ。」
短く答えると、はルークを呼んだ
「ルーク。ティアの譜歌が効いているとはいえ、油断はするなよ。
何かあったらこっちに逃げてこい。いいな」
「おっ、俺が逃げるわけねーだろ!」
「……ま、そうなることを祈るか」
呆れたようなため息で、はジェイドたちを促す
「とにかく、ブリッジの奪還だな。急ごう」
頷いた二人は、それぞれルークに一言残して艦内へ入っていく
「……ルーク、」
一度立ち止まって、はルークの瞳を覗く
「何だよ?」
「……いや、何でもない」
軽く目を伏せ、は踵を返すと艦内へ足を踏み入れた
※は「砂漠の銀狼」の称号を手に入れた!※
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あとがき
のことについて書きました
ちょっと間が空きましたが、称号も更新
まだガイ様でてきません。スミマセンm(_ _)m
あと二話以内には出す予定です。
2008 7 6 水無月