「それで、何を調べるんだ?」
「創世暦時代のことやパッセージリングについてもう少し詳しい情報が知りたい。
あとはどうやって外殻大地が造られたのか……過去に似たような事例はなかったのか……
とにかく関係のありそうな資料を片っ端から調べる。」
「わかった。俺はあっちの方から調べていこう。」
こくりと頷いて、は壁沿いに並ぶ本棚を見上げた。




「……これも違うな。」
パタン、と革表紙の分厚い本を閉じる。
「さすがに創世暦時代の事はあまり見つからないか……」
同じくガイも分厚い本を閉じて肩をすくめた。
「パッセージリングやセフィロトは教団の機密事項に属していたし、そっちに関してはダアトのほうがありそうだな。
……とはいえ、今は手を出せん。ここで少しでも役に立ちそうな資料を探すか。」





それからさらに調べ物を続けること小一時間。
の目に、ある文章が止まった。
「ローレライ……剣と宝珠……?」
パラパラとその続きをめくる。
「第七音素を集束、拡散させる譜術外装……ローレライの鍵、か……」
「何かあったのか?」
ぶつぶつとなにやら考え始めたにガイが声をかける。
「ん?ああ、ちょっとな。
……ガイ、ローレライについてどこまで知ってる?」
「うーん……」
ガイは腕組みしてしばし考え込んだ。
「第七音素の意識集合体……ってくらいしか。
そういえば、パッセージリングの話をしてたときに言っていたな。
確かローレライの鍵……だったか。プラネットストームを発生させる時に使ったもので、ユリアとローレライの契約の証と聞いてる。」
「その鍵自体も第七音素で構成され、セフィロトを自在に操る能力を有していた……か。
パッセージリングが第七音素でしか操作できないというのはここに起因するのかもしれないな。」
「なるほど……そういえばも治癒術……第七音素を扱えるんだよな。」
「ほんの少し素養があっただけだ。ティアやナタリアほど高度には扱えない。それに……」
はふ、と自嘲気味に微笑み、
「私は誰かを助けれてやれるような人間じゃない。」
目を通していた本を静かに棚に戻す。
遠くに、アルビオールの駆動音が聞こえてきていた。







「ガイ!!」
アルビオールから降りたルークが駆け寄ってくる。
「おつかれさん。上手くいったか?」
ガイが訊ねると、ルークたちは揃って口篭った。
「……とりあえず結果を聞かせてくれ。大佐。」
「パッセージリングの操作には成功しました。セントビナーが魔界に沈むことはないでしょう。」
「その割には浮かない表情だな。」
「そうですね……とりあえず会議室へ。少々長くなります。」





ジェイドはシュレーの丘のパッセージリングがルグニカ平野のほぼ全域を支えていること。
そしてこのままではエンガーブやカイツールまでも崩落する危険性があると話した。
「……やってくれたな、あの男。」
ちっ、とは苛立たしげに舌打ちする。
「しかしどうする?パッセージリングの操作が出来たとはいえ、このまま外を放っておくわけにもいかないだろ。」
「一度外殻大地に戻りませんか?エンゲーブの様子も気になります。」
「そうだな。崩落の危険があるなら避難させないと。」
ルークは皆に目配せする。仲間たちは迷わず頷いた。
「行き先が決まったのなら、急いだほうがいいな。」
「そういえば、、身体のほうはもう大丈夫なんですの?」
席をたったところでナタリアが訊ねる。
心配そうな表情をするルークやナタリアに、はふ、と微笑んだ。
「ああ、もう大丈夫だ。迷惑をかけたな、皆。」
「お気になさらないで。いつもは私たちがあなたに助けられているのですから。」
「そうだぜ。これからは無茶しないで、俺たちも頼ってくれよ。」
「……わかった。そうしよう」
あの我が儘坊ちゃんが、変わったものだ。とは胸のうちでもう一度微笑んだ。



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 あとがき
ルークの成長は見ていてほほえましいですよね。
会議に参加できなかったさんのためにお勉強会でした。
 2012 6 24  水無月