「ん……」
目を覚ますと、見覚えのある無機質な天井が目に入った。
「……ユリアシティ、か?」
崩落するセントビナーから空へ避難して……その辺りから記憶が曖昧になっている。
「っ……」
辺りを確認しようにも身体が重く、力が入らない。
どうしたものか、とぼんやりする頭で考えていると、小さく音を立ててドアが開いた。
「……ガイ、か。」
「起きてたんだな。
……あー、そんな面倒くさそうな顔するなって。」
困ったように笑いながら、ガイはサイドの椅子に腰掛ける。
「調子はどうだ?」
「見てのとおりだ。……こんなことじゃ、傭兵失格だな。」
起き上がる気力もないほどだるい、というのは子供のころ以来か。
「熱はどうだ?……あ、寒くないか?何かほしいものとかあれば言ってくれよ。」
そんな言葉をかけながら、すっかり温くなったタオルを取り替えてくれる。
本当に、人の世話を焼くことには抜け目がない男だ。
「大丈夫だ。熱も下がっているし、だいぶ楽になってきた。」
「なら、いいんだが……」
どれ、と額に何かが触れる。
タオルじゃない、とそれを理解するのは、一瞬ですんだ。
「……ああ、下がってきてるな。よかった。」
「っ……!」
熱を測る手のひらに、驚き固まる。目が合ってガイも固まる。
「わ、悪い。その、つい……」
「……いや、いい。」
慌てて離れようとする手のひらをそっと引き止める。
「アンタの手……冷たくて気持ちいい。」
熱が残っているせいだろうか。
こんな言葉が出るなんて、自分でも信じられない。
「あ、ああ……」
冷たすぎず、温くない。大きな手のひらは、思いのほか心地よかった。
そっと、優しく撫でられて、心地よさに身を委ねる。






「……」
程なくして、穏やかな寝息が聞こえてきた。
シュレーの丘へ向かったルークたちを見送ってから、だいぶ時間が過ぎている。
「上手くやってくれているといいんだが……」
仲間の無事を祈りつつ、眠るの額をそっと拭う。
「……ん……」
小さな声が漏れて、が身動ぎする。
「──っ」
思わずガイは手を止めた。
熱で上気した頬や、汗で濡れた前髪、シャツの合間から覗く白い肌。
見たことのない姿に慌てて顔をそらし、長く息を吐く。


このまま、ずっと隣で────彼女を、守っていたいと思った。



「……何考えてるんだ、俺は。」
己を叱咤するように呟く。
はこんな姿を見られることを善しとはしないだろうし、ましてや誰かに守ってもらうことなど、欠片も望んではいない。そんなことはずっとわかっていたはずだった。
だが、最近の彼女はどこか脆く、小さくて、いつか壊れてしまうのではないか──そんな風に見えることがあった。
……」
朱色の頬にそっと触れると、まだ少し熱い。
彼女から、意識がそらせなくなる。

──どうしようもなく、に惹かれている。

守りたいと思うのは自分にとって特別な存在だから。
そう、自覚するのは簡単だった。
しかしはきっとどんなに傷ついても戦うことを止めはしないだろう。
自分に出来るのは傷ついた彼女をこうして見守ることくらいだ。
そんなことを改めて認識して、ガイは深くため息をつく。
やりきれない思いをごまかすように、タオルと洗面器を持って部屋を後にした。


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 あとがき
ラブラブ!イチャイチャ!楽しいです(^q^)
ガイ様がさん好きすぎる。
定番の看病イベントでした。
 2012 6 24  水無月