翌日――
一通り支度を整え、ルークたちはユリアロードに来ていた。
「ここを抜けると、ダアトの北西にあるアラミス湧水洞に出るわ。」
「パダミヤ大陸のあそこか……こんなところに繋がっていたとはな。」
「とりあえずダアトで情報を集めて、船で移動だな。」
「世界はどうなっているんだろう……」
ルークがポツリと呟く。
「ここで考えても仕方ないだろ。」
「そうね。行きましょう。」
ティアの導きでユリアロードを抜ける。
「――……っ?」
眩しい日の光から目を逸らし、足元に視線を落とすと、地下から水が噴出していた。
「これは……」
だが、足元に水がかかる感触はない。
「セフィロトの押し上げる力で水が弾かれるの。濡れる心配はないわ。」
「へえ……」
「出口まで案内するわ。こっちよ。」
ティアの案内で洞窟を進む。
道中の魔物はルークとガイが倒していった。
ルークに実戦経験を積ませるためでもあったが、
「に無茶はさせられない」
とガイが強く押したのだ。
「アンタも過保護というか……心配性だな。」
「が無茶をしすぎなんだっての。」
「ガキじゃないんだ。自分の限界ぐらいわかる。」
不満を含んだ呟きに、けど、とルークが答える。
「ってなんだかんだで無茶するよな。」
「……?」
「タルタロスの時だって一人でラルゴと戦おうとしただろ。」
ていうか戦ってたよな、と言うと、横でティアが頷く。
「が強いのはわかってるけど、見ているとヒヤヒヤする時があるのは確かね。」
「極め付けが障気の海に飛び込む、だからなあ。」
実際にやったことなので反論できない。
はすね気味に口を尖らせた。
「仕方ないだろ。そうするしかないと思ったんだ。」
「ああ、わかってるって。
ただ、必要以上に無茶するなってことだ。
俺たちがこうしているときは、もっと頼ってくれ。」
「……ああ。」
ガイの言いたいことはわかっている。
それでもきっと、その時はそうしないとやってられなかったのだ。
道を遮るツタや木の根を焼き払いながら道を進む。
「けっこう魔物が多いな……大丈夫か、ルーク。」
「あ、ああ……」
ルークの返事には元気がない。
「どうした?」
「俺……アクゼリュスのことばっか考えてたけど……
もしこれでセントビナーとかも落ちたら、それも全部、俺のせい……なんだよな……」
多く、重すぎる命の責任。
ルークの表情にはずっと影が差していた。
「あーあー、そうやってうだうだ考えんなっつーの。」
重い空気を破ったのはガイの言葉だった。
「お前、これから変わるって決めたんだろ。
だったら過ぎたことでいつまでもウジウジしてんな!」
「過ぎたことって……」
「あのな、ルーク。こういうことは考えたって仕方ないんだ。
確かにアクゼリュスでたくさんの人が死んだ。
もし遺族がいたとしても、彼らが償いを望んでるかなんてわからない。
だったら、とにかく出来ることをするしかないだろ。」
「う、うん……でも、俺に出来ることって……なんだろう……」
何というか、うってかわって、というのはこういうことを表すのか。
後ろ向きなルークの発言に、ガイとは顔を見合わせる。
「ルーク、そうやって後ろ向きになっても何も解決しないぞ。」
「まったくだ。暗くてウザいだけだっての。」
「う……」
「じゃあとにかく人助けしろ!
残りの人生全部使って、世界中の人全部幸せにしろ!!」
ガイにしては珍しく、ルークに声を荒げた。
その勢いに、とティアも思わず驚く。
「そ、そんなの無理に決まってるだろ!」
さすがにルークもこれには言葉を反した。
「わかってる。ただ、それぐらいの勢いで何かしろって言ってんだ。」
「あ、ああ……」
こんな発破をかけられるのも、二人の付き合いゆえだろう。
そんな二人のやり取りを見て、はふ、と微笑む。
「ルーク、特別にいいことを教えてやろう。」
「?」
「俺の師の言葉だ。」
『目を養いなさい。先に起こることを正確に見通せる目を。
聞いて、触れて、見通すことができたら――
あとは、あなたが出来ること見つけなさい。
あなた自身が生きて、先に進むために。』
「生きて……先に進む……」
ルークの表情が、少し変わった。
「方針は見えそうか?」
「何ていうか……わかったような、わからないような……
でも、何となく……わかりそうな……」
「今はそれでいい。外に出たら、そのうち見つかる。」
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あとがき
ユリアロード編ですね。場繋ぎ的な。
師匠が師匠が何者なのかだんだんわからなくなってきました(笑)
次でようやく合流ですかね。
2011 11 3 水無月