「失礼しますよ」
コンコン、と軽快なノック音を響かせジェイドは扉を叩く
「何かあったんですか?」
中には二人の人間がいた
1人は色白の肌に暗栗色の髪を持つ十代半ばの少女
もう1人は真っ赤な髪に碧の瞳を持つ、少女と同じ年頃の少年
清楚な声で訊ねてきたのは少女の方だった
「いえ、たいしたことではありませんよ。お二人に紹介したい方がいまして」
「紹介、ですか?」
頷き、ジェイドはに目配せする
は一歩前に出て、二人の顔を見た
一瞬、ほんの一瞬だけその瞳が大きく見開かれる
「……なるほど」
呟き、は自分を指して口を開いた
「突然で悪いが失礼するよ――
俺は。こちらの大佐に依頼され、急遽あなた方二人の護衛を任された」
「護衛?」
「急な話でよくわからないのですが……」
説明しようとしたジェイドを抑え、は説明する
「俺は旅をしていてな。道中飢え死にしそうだったところを導師の御厚意で拾っていただいたんだ
それで話を聞いたら、目的地が同じバチカルだと言うんで乗せてもらっているのさ」
「事情はわかりました。ですが、何故護衛を?」
「何でもそちらは特殊な事情で無事にバチカルまでたどり着きたいとか……
俺とて、なにがあってもバチカルへ行かなければならなくてな。
なのでバチカルまで同行させてもらうかわりに傭兵の仕事を仰せつかった。
用は便宜上依頼を受けたってことだ。」
「なるほど……そういうことでしたら」
安心したように表情をゆるませ、
「ティア・グランツです。短い間ですが、よろしくお願いします」
少女――ティアは手を差し出した
「あぁ。それと、俺には敬語を使わなくてもいいぜ」
握手に応じながら付け加えるようには言う
すると、今まで黙っていた少年が不意に口を開いた
「旅人だぁ?そんな得体の知れねー人間に護衛なんて任せられるか」
「!」
一瞬、場が凍り付く
「……一つ、言っておこう。」
今までと違う、低い重たい声では告げる
「俺はあんたの護衛を頼まれて引き受けた。
あんたが何を言おうと俺はあんたを守る。もしそれが嫌なら大佐に言え」
淡々とした口調で告げられた言葉には、他にはない独特の威圧感があった
「……とりあえずなんて呼べばいいのか、名を教えろ
必要なときにはこちらから指示を出し、無用な会話は極力さけてやる」
「てめぇっ!人が黙ってりゃいい気になって――!」
少年の怒声は途中でかき消える
「名を教えろ、と言ったんだ」
ピタリ、とナイフの切っ先を突きつけ、低い声で告げる
「……」
しばしの沈黙の後、
「……ルークだ」
少年――ルークの苦い呟きが、静かにこぼれた















「さて、一段落つきましたし、、あなたの話を聞いてもよろしいですか?」
「そうだったな。いいぜ、何が聞きたい?」
「まず、あなたがどこからエンゲーブへ向かおうとしたのか、もしよければ以前滞在していた場所を教えてください」
は軽く頷き、口を開く
「俺がソルジャーズ・ギルドに属しているのは言ったな。
主な仕事は商隊および要人の護衛なんだ
最近まではケテルブルクの方に滞在していた」
「では、どのようにしてここまで?」
「ケテルブルクから船でグランコクマに行って、そこから徒歩だ。
ちょうど三、四日前か。」
「なるほど……わかりました。ありがとうございます」
「いや。このくらいたいしたことはない」
「では、私は失礼します」
ジェイドが出ていくと、はティアの方に向き直った
「ところで、ティアはどうしてここに?」
「ええと……いろいろとあって。ややこしいことなんだけれど、」
所々端折りながらティアはいきさつを話す
時折イオンやアニスの補足が入り、和やかな雰囲気で話は進んだ
「……なるほどな。だからティアとルークはこんなところにいるのか」
「ええ……ルークは私の不注意で巻き込んでしまった。
だから私には彼を無事にお屋敷まで送り届ける義務があるの」
「義務、ね……まぁそうなるか」
「でも、私このあたりの土地勘が無くて……が一緒で心強いわ」
「期待してくれるのはかまわないが、俺もバチカルの方は十年以上行ってない」
「そうなの?」
「まぁ……訳あり、でな。バチカルの方へ行く仕事はほとんど断っていたんだ」
「それじゃあ、バチカルには初めて行くの?」
「いや、生まれはバチカルだ
ただ、十にもならない内にケセドニアの方へ移り住んでな。それきりだ」
「では、帰郷ということになりますね。
――どうしてか、理由を訊いてもいいですか?」
イオンの問いに、は一度目を伏せて、
「……野暮な用事さ」
呟くように答えた
「父親からの、古い知人がいると聞いてな」
トーンの落ちた低い声。だがそれはすぐに切り替わる
「少し話し疲れたな。風にでも当たってくる」





   は「キムラスカに生まれた者」の称号を手に入れた!※



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  あとがき
 あれ?間違えて長髪の方g(蹴
 ルークとティアです。ようやくメイン登場。
 ティアの髪の色は表現に苦労しましたよホント。
 カラーコードの載っているページを網羅したりとか(笑
 さーてそろそろ戦闘場面ですね。書くのが楽しみですww
  2008 4 22  水無月