雨の中の邂逅

何故、気づかなかったのだろう

自分の迂闊さを嘆くより、そのことに腹が立って仕方なかった。

「あれは……！」
廃工場を抜け出ると、空は鈍色の雲に覆われ、ざあざあと雨が降っていた
その向こうには陸艦の昇降口が見え、手前にいくつかの人影が並んでいる。
中には見慣れた小柄な人影もあった。
その中ではっきりと映る鮮血の赤――
「鮮血のアッシュ――？！」
皆が驚き戸惑う中、誰よりも早くルークが剣を抜いてアッシュに斬りかかった
「っ、イオンを……返せーっ！！」
キィン、と音が響いて、ルークの剣が弾かれる
「ルーク！」
ルークは何とか体制を立て直し、もう一度アッシュに斬りかかった
アッシュはそれを難なく受け止めるが、今度はルークも弾かれないよう踏みとどまる
そして、二人の顔が間近に迫って――
「――っ？」
一瞬、ルークの表情が強張った。
その隙を逃さず、アッシュはルークをはじき飛ばす
「アッシュ！」
そのまま追い打ちをかけようとして、背後に控えていたシンクにそれを制止された
「アンタは熱くなるとやりすぎる。剣を収めな」
「……」
アッシュはルークらを一瞥すると、何も言わず戦艦に乗り込んでいった

「さて――これからのことを考えましょうか」
しん、と空気が静まり返る中、ジェイドは切り出す。
「まず、六神将に会った以上、こちらの囮作戦は失敗です」
「そうだな。一度バチカルに戻って船を出すか……」
するとナタリアが困ったように首を振って、口を開いた
「それは……無理ですわ」
「どういうこと？」
「お父様は、まだ……マルクトを信用しておりませんの。
グランツ謡将の船が出てすぐ、バチカルの港は閉鎖されましたわ……
今は、どんな船であろうと出入りは出来なくなっていますの」
「逃げ道は無し、か……用意周到なことだ」
ち、とは忌々しげに舌打ちする。
「俺としたことが迂闊だった。
あそこは迷わず切り込んでイオンを奪還すべきだったか」
「過ぎたことを言っても仕方ありません。
それに、あらかじめ目的地を知らせておきながら、ここで会ったからといってそれを変えるようなことをするとは思えない」
「ああ、陸艦の進行方向から見て砂漠の方面に向かったのは間違いないな」
海路は封鎖され、陸路は不利な点が多い。

「――結論から言わせてもらおう」
皆が思案顔で俯いていると、不意にが口を開いた。
「このルートをたどっている時点でおそらく全体の進行に遅れは出ているだろう。
さっさとアクゼリュスに行きたいのならバチカルへ引き返して海路を使うべきだ」
「でも港は封鎖されて……」
「その程度どうにも出来るだろう。
権力者ぞろいだろうが。この面子は」
「それじゃあイオン様は！」
「俺だけで奪還に向かうという手もあるが……」
「それは危険だ。いくら君でもあの六神将を相手に一人で挑むなんて」
「わかっているさ。案の一つだ。
どのみちアクゼリュスに早く着いたからといってすぐにどうこう出来るとは思わない。
ならばここから砂漠を渡ってケセドニアに向かうほうが確実だろう。
オアシスを経由して直接向かえばそれほど時間はかからないはずだ」
「それならザオ遺跡に行ってイオン様を探したほうがいいわ。
仮にイオン様が命を落とされてしまったら、今回の和平に影響が出るかもしれない」
「ふむ……」
ジェイドはしばらく何か考えこむように静止していたが、やがて口を開くと、
「では、ルークに決めていただきましょう。
このまま陸路を行くか、一度バチカルに戻るか……
どうしますか？ルーク」
どこか挑発めいた口調でそう問いかけた
「しかし、バチカルに戻ったとして、どうやって船を出すんだ？」
「そうですねえ。たとえばナタリアを引き渡して船を出すよう要求すれば……」
ジェイドの言葉に、ナタリアが焦ったようにルークに詰め寄る
「そ、そんなのダメですわ！わかっていますわね、ルーク！」
それが疲れに響いたのか、ルークはかったるそうにジェイドを見上げる
「何で俺がそんなこと決めなきゃいけねーんだよ、」
「責任ある親善大使様だからこそ、ですよ
さあ、どうするんですか？」
「――陸路！」
ルークは一度ちらりとナタリアの方を見やって、半ば自棄気味にそう答えた。
「さて――進路は決まったな。
で、どうするんだ？直接ケセドニアへ向かうか、遺跡に行ってイオンを救出するか。
どっちでもいいが、俺は案内した後遺跡へ向かうぞ」
「ルーク様、イオン様を助けてください！ついででもいいですから！」
「わーったよ。
遺跡だ。遺跡に行きゃあいいんだろ！」
俯いていた顔を上げ、ルークは気だるそうに歩を進める。
たちもそれに倣って東へと進みだした。

「……何事も、なければいいが」

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　あとがき
ヤッホォォイ！どんだけ久しぶりの更新だ自分ｗｗｗ
ってかタイトルまんまじゃねーかｗｗｗ
ここ省こうかなーと思ったけどつなげないんで書きました！
次こそザオ遺跡……！いけるといいな。
砂漠はヒロインの十八番なのでちょっと長めに書きます。
でもゲームだとかったるいことこの上ない場所だよね！！
　2009　8　22　　　水無月
　2010　3　3　　修正