「さてと……結局振り出しに戻ってしまったな」
階段を下りながらが呟く
「唯一の手がかりはアリエッタですが……」
彼女は先ほどヴァンに連れられていった
「根気よく探すしかないか、」
「それほど広い城じゃないはずだし……ん?」
先頭を歩いていたガイが不意に立ち止まる
「どうしました?」
「今何か……変な感じがしたんだが……」
「変な感じ?」
「そ、それって……」
ティアとアニスの表情が青くなる
「いや、足下に何か違和感が……」
このあたりだったか?とガイは足下の床石を軽く小突いてみる

コン、コン、コン、カツン、

ある一箇所で、音が変わった
「これは……」
「この下に部屋があります。何か仕掛けがないか探してみましょう」
「壁や床を徹底して調べた方がいいな」
それぞれ別れて床石や壁の装飾を調べてみる



「――あったぁ!」
しばらくしてトクナガの上からアニスの嬉しそうな声が降ってきた
「ここのレリーフ、押せるようになってるみたいですよ」
「注意して押してみてください」
「はーい」
ガコン、と音がして、アニスの押したレリーフが凹む
数秒おいて、レリーフのあった壁が奥に開いていった
「……どうやら当たりのようだな」
「急ごう。ルークが心配だ」




地下に降りていくと、何やら人の声が聞こえてきた
距離があるため何を言っているのかはわからない
「行こう」
右手を剣に添えながら、が一歩踏み出す
カツン、とブーツの音が小さく響いた


薄暗い通路から一気に広い空間へと景色が移り、
「――ルーク!」
一番奥の台座に横たわる焔色の髪を見つけ、ガイは躊躇うことなく走り出す
「ちっ」
同時に、台座の前に立っていた人影が逃げるのを見て、はそちらへ向かった
「逃がすかっ!」
剣を抜いて牽制し、敵が怯んだ隙にガイが後ろから斬りかかる
キィン、と甲高い音が響いて、何かがはじけ飛んだ
「っ?!」
「クソッ!」
直後、ガイの動きが止まり、その一瞬のうちに敵は逃げていった

「今のは……」
ぽつりとガイが呟く
「どうしたんだ、ガイ?」
「いや……今の、烈風のシンクだよな」
「ええ……」
「アイツ、ここで何やってたんだろ?」
「……さあな」
シンクの消えた方を見つめ、は曖昧に返事を返した




「ルーク……ルーク!」
台座に横たえられていたルークは、ティアの呼びかけにゆっくりと目を開いた
「……俺、は?」
「よかった……大丈夫そうね」
「命に別状はなさそうだな」
それを聞いて、皆ほっと胸をなで下ろす
「しかし……これは何なんだ?」
改めてルークの横たえられていた装置を見直す
かなり大型で、複雑な装置であることは見て取れた
「ガイ、わかるか?」
「いや、さっぱりだ。こんな装置は聞いたことがない」
「俺もだ。以前シェリダンに滞在していたが……大佐は、」
どうだ?と聞こうとしては言葉を変えた
「……どうかしたのか?大佐、顔色が悪いが」
「そうでしょうか?」
「何か知っているのか?」
「……いえ、まだ確信が持てません……
いや……確信が持てたとしても…………」
最後の方は殆ど聞き取れなかったが、ジェイドが動揺しているのはわかった
「そうか……――ん?」
これ以上聞いてもジェイドは答えないだろう。
そう結論付け、は何気なく視線を落とした
「これは……」
足下に円盤状のものが落ちており、それを拾い上げ、眺めてみる
「音譜盤……?」
「それ、シンクが落としていったヤツじゃないか?」
「何かわかるかもしれません。あとで解析してみましょう」
ジェイドに音譜盤を渡し、再び考えを巡らせていると、ティアが口を開いた
「とりあえず一度カイツールに戻りませんか?
ルークも整備士さんも無事だったことですし……」
「そうだな。結局休む暇もなかったし……」
「ふぇ〜アニスちゃん疲れたよう〜」
へにゃりと、アニスがだらしなく肩を下げかけて
「そーだ!」
ぱっとイタズラを思いついたような表情になると、
「ガイー、おんぶして〜v」
背後からガイに思いっきり飛びついた
「わっ?!」
不意打ちを食らったガイは勢いで前によろけるが、何とか踏みとどまる

そして、何事かと背後に目をやり――

「――うわぁっ?!やめろぉっ!!」

真っ青な表情でアニスを突き飛ばした

「きゃっ?!」
「な、何だ……?」
明らかにおかしいガイの反応に、皆が驚く
「あ……俺……」
我に返ったのか、ガイは自分の手元に視線をやり、呆然と呟いた
「今の驚き方は尋常ではありませんね。どうしたんです?」
「いや……身体が勝手に反応して……
すまない、アニス。怪我はなかったか?」
「う、うん……大丈夫」
「ただの女性嫌いにしてはおかしいな。
何かあったのか?」
「わからねぇんだ……ガキの頃はこうじゃなかったし……」
ただ、とガイは言いにくそうに言葉を濁す。
「なんつーかこう……すっぽり抜けてる記憶があるんだ。
もしかしたらそれが原因かもしれない」
「ガイも記憶障害なの?」
「いや、違う……と思う。
抜けてる記憶は一瞬だけだからな。」
「どうして一瞬だとわかるんだ?」
「わかるさ。
……抜けてんのは、俺の家族が死んだときの記憶だけだからな。」
快活な彼の性分からは見当もつかない過去に、皆は押し黙ってしまった。
「そんな顔するなって。驚かせて悪かったな。
もう大丈夫だ。カイツールに戻ろう」
いつもの人好きのする笑顔に促され、一行は歩き出す
ちらりと盗み見たガイの横顔はどこか哀しげだった



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 あとがき
えー、正直書きにくかったです。
でもカースロットフラグのためにやっておかねば、ということで無理矢理書いてみました。
次はケセドニアまで一気に進みますよー
 2008 12 15  水無月