夜が明けて、は太陽が昇りきらないうちに身支度を整える。
カシャン、と音を立てて武器の動作を確認。
荷物はすぐ発てるようにまとめておいて、部屋を後にした。
今回の依頼は凶暴な魔物の退治だった。
街道の足であるチョコボを狙うため、早急に退治してほしいとのことだ。
「チョコボを狙う魔物、ね……」
は自然と頬が緩むのを感じた。
「ホント、懐かしいわ。」
いつでも戦闘に入れる体勢では公司の屋根に陣取っていた。
「さて……」
全身の感覚を研ぎ澄ませ、街道を見渡す。
徐々に街道を通る人が増え始め、いくばくか時間が過ぎた頃。
ふわりと、髪を揺らす風の流れが、微かに変わった。
「──!」
そして同時に悲鳴のような鳥の鳴き声がの耳に届いた。
「あそこか!」
弾かれたようには泣き声のほうへと駆け出す。
「いた──標的確認、と。」
目的の魔物は古い遺跡の上に立っていた。
長い腕にはチョコボが捕らえられ、苦しそうにじたばたともがいている。
すかさずはナイフを構え、その腕に目掛けて投げつけた。
カキィン!と硬い音を立ててナイフは弾き返される。
「やはり外皮は硬いか……」
次弾に、と番えていた指をはずし、静かに距離をとった。
チョコボイーターはぎらつく瞳でを睨みつける。──完全に敵として認識されたようだ。
小柄な人間を標的に捉え、するりと手のひらから逃れたチョコボには目もくれずこちらを睨んでいる。
「ここからが本番、かな。」
ふう、と息を吐き、今度は刃の広いアサルトナイフを構える。
の殺気を感じたのか、チョコボイーターは巨大な拳を目掛けて振り下ろした。
「!」
素早く飛び退いて攻撃を避け、がら空きの懐に飛び込もうとした瞬間、
「うらぁっ!」
掛け声と共に、何かが唸りを上げての真横を掠めていった。
不意に強烈な一撃をくらって、チョコボイーターはよろめく。
「な、何が……?」
呆然とするの周りには、いつの間にかユウナとガードたちが集まっていた。
「さん、大丈夫ですか?」
「え、ええ……それよりもあなたたち……」
どうして、と言いかけたところで、ティーダが遅れて駆けつけた。
「あいつのせいでみんな困ってるんだろ?俺達も協力するッス!」
そう言いながら、剣を片手に勢い良く参戦する。
「ちょっと、アーロン──」
咄嗟に振り返ると、アーロンも自信の得物を構えていた。
「話は後だ。来るぞ!」
アーロンに促され、も慌てて視線を戻す。
戦闘中に標的から目を離すなんて、馬鹿のすることだ。
自分を叱咤し、ティーダたちが戦っているほうを傭兵の眼で見つめる。
「あのときの同種のようね。私が隙を作るから、あなた達が懐へ飛び込んで。チャンスは一瞬よ。」
アーロンは頷き、ティーダたちの戦線へ加わる。
「ユウナ、召喚はできる?」
「はい!」
「あの魔物は魔法への耐性は高くないわ。強力な魔法を叩き込めば必ず隙が生まれる。」
の意図を汲み取ったユウナは、しっかりと頷いて召喚の陣を描く。
同時にも詠唱を始めた。足元に複雑な魔方陣が浮かび上がり、周囲に魔力が集まる。
「──業火の弾丸」
は静かな動作で腿のホルスターに手を伸ばし、武器を構えた。
引き金に指をかけ、魔力を集中させながら標的に狙いを定める。
「撃ち抜け!」
声と共に引き金を引くと、炎の弾丸がチョコボイーター目掛けて発射された。
ドォン、と爆音が響く中、は続けて三発撃ち込む。
両腕、頭部、顔面と立て続けにくらい、チョコボイーターの巨体がよろめく。
さらにユウナ召喚獣による追い討ちを受けて、完全にひっくり返った。
「今だ!一気に攻めて押し返す!」
アーロンの言葉に従い、ティーダたちは集中攻撃を浴びせる。
崖っぷちまで追い詰められた標的は手足をばたつかせ、
「とどめ!」
ティーダの一撃をくらい、崖下の旧道へと落ちていった。
「ありがとうございます!助かりました!」
チョコボ屋の女性は何度も感謝の言葉と共に頭を下げた。
は依頼主から報酬を受け取り、ティーダたちは無料でチョコボを借りられることになった。
「要するに……あなたの思いつき、というわけね。」
何故ああいう状況になったのか──事情をきいて、は呆れたようにため息を吐いた。
「まったく……相変わらずというか……」
「?」
の呟きにティーダは首を傾げる。
「本当に良く似ていると思ったのよ。」
ふ、と微笑むと、ティーダはう、と嫌そうに顔をしかめた。
はチョコボの背に荷を乗せながらユウナに訊ねる。
「ジョゼ街道の方へ向かうんでしょう?私も途中まで同行していいかしら?」
「もちろんです!みんな、いいよね?」
ティーダは二つ返事で了承。キマリ、ルールー、アーロンも黙って頷いた。
ワッカだけは一度ちらりとを見て、どこかぎこちなく頷いた。
「少しの間だけどよろしく。」
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あとがき
戦闘シーン楽しいです^^
補足と言いますか、今回のヒロインさんの大まかな武装について。
メインウエポンは銃です。これについては後々述べます。
小型のナイフが数本。主に投げて使いますが、手に持っても戦えます。
アサルトナイフ。基本的に1本ないし2本しか持ってません。ガチンコバトル用(笑)
あれです、バイオハザードとかのナイフ思い浮かべてもらえたら。(やったことないですが)
2013 1 8 水無月