年末年始〜verリリカルなのはStS〜




「どう?ヴァイス。綺麗になった?」
「ん、いいんじゃねぇの」
すとん、と脚立から降り、汚れた雑巾を畳み直す
ぐるりと部屋を一週見回してから、はヴァイスに顔を向けた
「この調子だと今日中に終わりそうね」
「だな。
晩飯はどうする?出前でも取るか?」
「一昨日も出前だったじゃない」
「お互い忙しいんだし、仕方ないだろ」
困ったような呆れたようなヴァイスの言い分に、そりゃそうだけど、とはごねてみせる





機動六課の解散から半年と二月
宿舎の解散に伴い、とヴァイスは同居することになっていた
とはいっても、幼馴染みである二人は六課時代でも同室で過ごしていたため、何ら変わりはない
唯一違うのは、寝室が一つと言うことだけだった



『どうせやし、六課のみんなで年越ししやへん?』
カリム主催のクリスマスパーティの帰りに、はやてが言い出したこの一言がきっかけだった



 5日前、二人は聖王協会で開かれたクリスマスパーティに招待された
他にも、はやてを初めとする元六課の面々が何人か来ており、久しぶりの再会に話が弾んだ
ヴォルケンリッターの四人やなのは、フェイト両元隊長は相変わらず、
若手の中ではティアナだけが顔を出していた
話を聞く限りは元気そうで、クリスマスも休む暇がないとのことらしい
そんな話を聞いたはやてが、解散前にこんな事を言いだした
『一度、元六課のメンバーで集まらへん?
年の瀬やったら休み貰えるやろうし、みんなで声掛け合ってみたらどうやろ』
その場の勢いも多少あってか、その提案は満場一致で受け入れられた。



そして、大晦日には時空管理局の本局を借りて宴会が行われることになり、
出席することにした二人はその日までに全ての仕事を終えておく必要があった





「……じゃあ、今晩は私が作るわ」
少し考えて、は言った
「こないだの煮物残ってるから、野菜炒めて簡単にすませる」
「わかった。俺はもう少しその辺片付けとくから、お前は用意してろ」
「りょーかい」
長いつきあいのためか、即座に役割分担し、各々作業に向かう



「んー……味付けはこんなモンかな」
フライパンから適当につまんで口に放り込む
「よし……っと。
まったく……はやて部隊長――じゃなかった、特別捜査官も突然なんだから……「仕方ないだろ」
ぼやきながら皿に盛りつけていると、背後から腕が伸びてきた
「ちょっとヴァイス、」
「どうせ二人で食うんだし、いいだろ」
「もう……」
困ったように口を尖らせても、ヴァイスには効かない
「今そっち持ってくから、机の上片付けて」
ちゃちゃっと食器をトレイの上にのせ、ヴァイスが適当にスペースをあけたテーブルの上へ運ぶ
「おまちどおさま」
テーブルの上に煮物と野菜炒めと白飯が並ぶ
「「いただきます」」
どちらからともなく手を合わせ、料理に箸を付ける
「この煮物味が染みてて美味いな」
「一晩おいたからね。今回のは自信あるし」
にこりと微笑みは炒め物を取る
「あ、この人参甘くて美味しい」
「そうか?どれ……」
ヴァイスも焼き色の付いた人参を口へ運ぶ
「ホントだ。美味いな」
「こないだエリオとキャロから送られてきたのよ
自家製で無農薬なんだって」
「へぇー。そんなこともやってるのかあいつら」
「いいじゃない。楽しそうで」
「それもそうだな」
のんびりと会話を交わしながら年末の晩餐を楽しむ





「ねぇ、ヴァイス」
不意にが、真剣な声で訊ねる
「そろそろさ……その……一緒に住まない?」
「……年の暮れでボケたか?」
「バカ!そうじゃなくって……」
はぁ、と白いため息をついては呟くように言う
「……・グランセニックって呼ばれるのも良いかな、って」
ほんのりと赤く染まった頬が目に入り、ヴァイスは思わず笑みをこぼす
「逆プロポーズか、お前らしいな」
「そんなんじゃないって!
……こないだのクリパの時に、」



『そろそろ結婚してもいいんじゃない?
お互いいい年だし、何年も一緒だからね
ラグナちゃんとも仲良いみたいだし……
後は苗字が変わるくらいじゃないのかな?』



「――って、こっそりなのはさんとフェイトさんに言われてさ、」
「そっか……」
「そっか、って……ヴァイスはどう思ってるのよ?」
「お前が結婚したいならするし、俺はどっちでもいいぜ」
「何か投げやりねぇ」
「結婚したからって何か変わるわけでもないだろ」
言った直後、ヴァイスはふと思いついたように付け加える
「ああでも、結婚したら余計なもんがくっついてこなくてすむか」
「余計なもの?」
「……気づいてないのか?」
「何が?」
「あー……」
一瞬躊躇い、ヴァイスは思い切って告げる
「アコース査察官、お前のこと狙ってたんだぜ」
「へー……――マジ?」
「マジだって。同居してるって言ったら退いてくれたみたいだけどな」
「そうだったの……」
「だからそういう意味では結婚するのも悪くないな」
それに、とヴァイスは微笑む
「夫婦になったら一緒に休みも取りやすくなるしな。
何かにつけて口実も作りやすいだろ?」
「うわ、無粋ー」
そうは言いながらも、の表情は嬉しそうだった








「……で、結婚の報告はまず誰にする?」
「あー……とりあえずはラグナ、にしておくか」




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  あとがき
  突発的年末年始企画
  年末編はリリカルなのはです。知ってる人いるかな?
  ヴァイスくんは好きですよ。兄貴キャラ万歳www
  ツンデレヒロインやってやりました。楽しかったです
  2007 12 31   水無月