「んー……」
しとしとと降り続ける雨の音に、うっすらと瞼を持ち上げる
外は昨夜から雨が続いており、いっこうに止む気配はない
ふと、隣を見れば恋人が眠っている
そしてその腕は当然のように腰に回され、身体を緩く拘束していた




ケフカを倒し、瓦礫の塔が墜ちてから一年あまり
世界は少しずつ、確実に再興し始めている
魔導という、世界を脅かしていた力が消え、人々の心は明日への希望で満ちあふれていた




共に世界を救った仲間達は、各々帰るべき場所へ
は――セッツァーと共に行くことを決めた







「それにしても……」
はぁ、と小さく溜息をつく



昨日は飛空挺のメンテナンスをしていたのだが、あいにくの雨で中断せざるを得なくなってしまった
そのおかげで、久しぶりに二人でゆっくり食事をすることも出来たのだが……
酒の勢い、もあったのだろう。
不意打ちで唇を奪われ、そのままさっくりと抱かれてしまった。
恋人である以上そういうことは経験済みだし、今更驚くことでもないのだが、
時間がたっぷりあるためか、セッツァーはいつもより長く、激しくを抱いた
微かに覚えているのは、甘い熱と、抱きしめる腕の強さと、
耳元で囁かれた、愛してる、という言葉だけ






「ったく……気持ちよさそうな顔で寝てるし……」
無造作に伸ばされた銀色の髪がシーツに模様を描いている
いちいち色っぽい男だ。
このやろ、と頬をつつこうとして、



「――人より先にイって、気持ちよく寝てた奴の言える台詞じゃねえよな?」

ぱしり、と簡単に腕を捕まれた
「なっ……?!」
かあっと顔が赤くなる
目の前のアメジストの瞳が愉しそうにこちらを見つめる
いつの間に起きてたんだコイツ
「おいおい、自分から仕掛けておいて照れるなよ」
「寝たふりなんて卑怯!」
「寝てたさ。お前の声で起きたんだよ」
この距離だしな、とセッツァーは悪戯気に囁く
寝起きで一段と低い声が鼓膜を震わせ、身体が再び熱を発する
「っ〜〜〜〜!」
「ん?どうした、熱でもあるのか?」
わかってて訊いてやがる、この男
「うう……黙れ、この変態賭博師」
「お、恋人に向かってそういう口を利くか」
少しお仕置きしねえとな、と呟いて、セッツアーはの腰に回した腕に力を込める
「っあ?!」
急な刺激に、昨夜から鈍い疼きを訴えていた腰がずきんと痛んだ
思わず目の前のセッツァーの肩を掴む
「っつ〜〜……
何すんのよ!」
肩を強く掴み、涙目で睨み付ける
「少しは懲りたか?」
「時々最低よね、あんた」
「愛情表現とでも思っとけ」
ばか、と声には出さず突っ込む
これ以上やったら藪蛇になりかねない
この男は基本的に、鬼畜ではないがサディスティックな方向へ行く
自分がマゾであるとは思いたくないが、どうもこの男には勝てない
「はぁ……」
知らず、溜息が零れる
「どうした?」
「なんでもない
……それより、どうするの?」
「何がだ?」
「今日どうするのか、って訊いてんの。
雨だし、メンテナンス続けるわけにも行かないでしょう?」
「そうだな……」
「買い物行くにも近くに街ないし……
久しぶりに挺内の掃除でもする?」
「……いや、」
セッツァーはしばし考えるように目を伏せ、ゆっくりと口を開いた
そして、緩く拘束していたの身体をそっと抱き寄せる
「セッツァー?」
急に距離が縮まって、は思わず肩を掴んでいた手を首に回した
「何するつも――……っんん、」
不意打ちで唇を奪われる
歯と歯の間から舌先が入り込み、たっぷりとの口腔内を犯した
「……っは、」
息が上がる前に解放すると、セッツァーはの耳元に薄く唇をあてて囁く
、」
びく、と抱きしめた身体が反応して、熱くなった
「今日は……このままお前を抱いていたい」
極上の声で、甘く囁かれて、
「っつ……」
一瞬言葉に詰まってしまった





「……わかった」
反抗すれば余計に体力を使うだけだ、
どこか気怠げに、は頷く
「お、今日はやけに素直だな」
「いつもは素直じゃない、って言いたいの?」
「抱いてるとき以外はな」
「……悪かったわね」
このばか、とくぐもった声で呟いて、はセッツァーの胸に顔を埋めた







雨は、飛空挺を包むようにしとしとと降り続いている
穏やかな、ある一日の朝




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 あとがき
セッツァー誕生日おめでとう。
なんかぐだぐだな下ネタでごめんなさいorz
 2009 2 8  水無月