「準ー?じゅーんー?」
コンコン、と自由の利く腕で、少し強めに壁をたたく
「どうした?」
ヒョイ、と間仕切り越しにのぞいた顔に少しの幸福を感じる
「んっとね……」
数日前のこと
アカデミアの授業中に転んでしまったは、左腕を骨折してしまった
それだけなら良かったのだが、同時に左足も軽い捻挫をしてしまい、左半身の不自由な生活を余儀なくされた
故に、実技を始めとするほとんどの授業に出られなくなり、自宅(寮)での療養を命じられている
講義は退屈だが、実技や体育は楽しい。
楽しみな科目もつぶれてしまい、しゅん、と肩を落としていた矢先だった
『俺が看病してやる。その代わり、治るまで俺の部屋に寝泊まりしろ』
勝手なリフォームのためにだだっ広い部屋。
怪我で動きの制限されるにとって、恋人の突然の申し出はありがたかった
「湿布張り替えて、もっかい歩く練習するから。手伝って?」
ベッドから体を起こし、包帯で固定された足を指す
幸いにも軽い捻挫ですんだ足は、3日もすればサポーターを巻いて歩けるようになっていた
「さっきしたばかりだろうが。無茶するな」
「だってー骨折も肘から下だけだし、足だってもう歩けるんだし、動いていないと退屈なんだもん
それにずっと身体動かしてないんだし」
「動かすなって言われたから自宅療養なんだろうが」
ぺし、と軽く頭をはたかれる
「そんだけ元気があるなら座学の復習の一つでもしておけ。
ただでさえお前はあの十代並みに筆記の点数が悪いんだからな」
「仕方ないじゃんー……」
むぅ、とは頬をふくらませる
考えるより先に身体が動く
体育会系・直感型のにとって、これ以上ない拷問だ
「準みたいにこつこつやってきた人とは違うのー。
私は実技で点数稼ぐタイプなんだから」
「アホ言え。お前はただ単に面倒くさいだけだろうが
入試の時にカウンタートラップタクティクスでオベリスクブルーの2年生倒したのは何処の何奴だ」
「それはそれ。これはこれ」
山育ち・体力派を自称するのに反して、はカウンタートラップを駆使した戦術型のデッキを使う
「机に座ってるだけなら寝てた方がマシ
覚えても使わないようなことばっかだし」
真面目に勉強する意志がカケラもないことを示してみせると、呆れたようなため息をつかれた
「ならせめて大人しくしてろ。卓上のデュエルならいくらでも付き合ってやるから」
「やったぁ!」
ころりと笑顔に変わる。
ゲンキンな奴だ、と準はこっそり呟いた
「あ、ねぇねぇ、明日香から貰った果物食べたい」
持ってきて、とは満面の笑顔でお願いする
2,3日前、突然やってきた明日香は、見舞いついでに準に看病のイロハをたたき込んで帰っていった
おかげでは体の自由が利かない以外、不便することのない生活を送れている
「どれにする?メロンはまだ堅いから……梨でも剥くか?」
「うん、それでいいよ」
かわいらしいバスケットから梨を一つ掴み、ナイフを入れる
綺麗に梨を剥いていく準の手元を、は頬杖をつきながら眺める
「……何だ」
「ん?準もだいぶ丸くなったなぁ、って」
初対面の時異様なまでに啀み合っていたことを思い出す
「何だかんだでもう1年経つんだもんねぇ」
しゃり、と切り分けられた梨をひときれ口に放り込む
「お前は全く成長していないがな」
「ま、失礼しちゃう。ちゃんと身長4センチ伸びました」
「中身は成長してないだろーが。毎回赤点のお前が進級できたのは誰のおかげだと思ってるんだ」
「ん?明日香。あと大地と亮先輩」
しゃあしゃあとは言ってのける
「俺は何処に行ったんだ?!」
「だって準ってば吹雪先輩と一緒に騒いでただけじゃない
それに明日香たち教えかた断然上手いし」
でも、とは付け加える
「準がいると退屈しないから。それは単純に嬉しかったよ」
さらりと言ってのけたに、準は柄にもなく顔を赤くし、
「……まぁ、それならよし、だ」
わしゃわしゃと慣れない手つきでの髪をなでた
「ぷっ……準、可愛い」
思わず吹き出したに準がさらに赤面して、の爆笑が止まったのは数分後だった
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あとがき
2周年のお祝いです。イヤッホー
書いててとても楽しかったです!あと名前だけでもキャラ出すのが楽しかったです!
ツンデレサンダーが楽しくて仕方ない今日のこのごろ
ちなみに、友達に無理にリクエストを聞いて書いた作品です(殴
2008 6 7 水無月