「それにしても暑いなー……」
残暑とはよく言ったモノで、暦の上では秋でも実際の所何ら変わることはない
むしろ暑さが増したような感じさえする
こんな日にはいっそのこと任務に出て涼める場所に留まりたいと思うのだが、エクソシストの立場である以上そんな勝手は許されない
しかたないか……
内心愚痴りながらも、コツコツと足取りはどこか軽く、は目的の部屋を目指す
「もう、無駄に広いんだから……。いるといいんだけど……」
目的の部屋の前に辿り着き、ドアにかかっているプレートを読む
“在室中”
簡素なプラスチックのプレートにはそう明記されていた
遠慮無くノックをすると、少し間が空いて気怠げな返事が返ってくる
「リーバー、入っていい?」
「おう、いいぞ」
ドアを開けると、新しいモノと古いモノが混じった、紙独特の匂いが鼻を突いた
「うわ、何日徹夜?」
「さぁな……っと。
んで、どうしたんだ?」
白衣はくたくたで、目の下には隈もできているのに
いつもと変わらぬ調子で話しかけてくれるリーバーの優しさに嬉しくなる
「仕事手伝えることないかな、って。
あと、残暑見舞いね」
はい、と片手に抱えていた盆を差し出す
「今日は特に暑いでしょ?
ジェリーがみんなにフラッペ作ってくれたの」
“涼”と描かれたカップに山のように氷が盛られている
「おっ気が利くな」
「科学班の人からリーバーが引き籠ってるって聞いてね
ついでに作ってもらって来ちゃった」
「引き籠りじゃねえよ。コムイ室長がうるさいから避難してきたんだ」
「あぁ、リナリーね。1ヶ月近く帰ってこれないんだっけ?」
「予定ではな。
おかげでただでさえ仕事しない室長がさらにしなくなってこっちは大変だっての……」
「あら珍しい。リーバーが文句言うなんて」
「お前と二人の時くらい愚痴らせてくれって。
……おっと。溶けちまうし、食うか」
「あ、そうね」
はい、とフラッペにスプーンをさして渡す
「いただきまーす」
しゃく、と氷をほおばると、甘さと冷たさが口の中で溶ける
「おいしー!さすがジェリー」
レモン色のフラッペは甘酸っぱく、の表情は幸福に染まる
「ん、これ炭酸入ってるのか?」
同じようにほおばり、リーバーは驚いたようにを見る
「うん。ジェリーに無理言って作ってもらったの
ダメ元で頼んでみたら、すごく張り切ってくれてね」
「へぇ……」
「リーバーこっちの方がいいかなって思ってさ。
……気に入らなかった?」
「いや、美味い。ちょっと驚いたけどな」
「そう。良かった」
嬉しそうに笑って、はフラッペを食べるリーバーの横顔を見つめる
髪傷んでるなー……あ、髭も伸びてきてる。肌も荒れてるし……
女じゃないけどこれはちょっと酷いかな?
そんなことを考えながら同じようにフラッペを食べた
「――ごちそうさまでした」
空になったカップを重ね、は律儀に手を合わせる
「美味かった。ありがとな、」
「いいの、私もどうせ任務なくて暇してたし
リーバー少し元気になったみたいで良かった」
命に関わるほどではないけれど、休んでいないと聞けば心配にもなる
「見舞いついでに仕事手伝うよ。
これでも元班長だし、元気な分仕事もはかどると思うけど」
「つっても……」
エクソシストになって心身を削っているに科学班の激務を任せるのさすがに躊躇う
「リーバーは人が良すぎるの。
少しは休まないと、身体持たないわよ?」
ほらどいて、と強引にリーバーを椅子から押しのけ、机を陣取る
そのまま癖で髪をかき上げようとして、
「あ――今日は結ってるんだった」
普段はおろしている背中までの髪を今日はポニーテールにしていたと思い出した
「そーいや今日は珍しく髪結ってるんだな。何でだ?」
「えっと……それは……」
は顔を赤くして口籠もる
「リーバーの……」
何やら言いにくそうなの様子に、リーバーは自分のしたことを思い出してみる
そして、一つのことに思い当たった
「……いつも、跡つけてる場所か」
「見える所につけないでって言ってるのに……
でも、このごろ忙しくて会えなかったからすっかり消えたみたい」
「あー……なるほどな」
すっかり忘れていた。などとは言えず、何とも言えない気分でリーバーは頷いた
漆黒の髪とは正反対の白い項
自分でもほぼ無意識に跡をつけていたようだった
「まぁ、消えたんならもう一度つけなおせばいいだけだしな」
にやりと楽しげな表情でに手を伸ばす
「ちょっ……こんなところで……!
っていうか仕事ー!!」
手元にあったファイルでぱこんと殴ると、リーバーは大人しく引き下がった
「悪かったって。睨まないでくれよ」
「恋人とはいえ、時と場合があるでしょ。
次変なコトしたら仕事増やしてやるからね」
「悪かった。もうしない」
むぅ、とむくれると、リーバーはもう一度頭を下げて謝った
「……あ、で、でも」
何となく言い過ぎた気もしなくもなくて、はそっぽを向きながら付け加える
「膝枕、くらいならしてあげるから……
大人しく寝てなさいっ!」
「何で命令口調なんだ?」
「いいから!」
膝をぽんぽんと叩き、リーバーを半ば無理矢理寝かせる
「んじゃまぁ、お言葉に甘えさせて貰うか
何かあったら起こしてくれ」
「ん。……おやすみ」
眠る恋人を見つめる表情は、自然と優しくなっていた
------------------------------------------------------------------
あとがき
誕生日おめでとーリーバーはんちょー。ていうか初書き。
ていうかぶっちゃけ二番煎じです。かき氷ネタ。
だって好きなんだもん。かき氷
あといまいち口調がよくわからないOTL
タイトルはCMみて思いつきました(笑