「よし……っと。これで完成!」
鍋を火から下ろし、大きめのタッパーに移し替える
「ニール、きんとん出来たよ」
「ああ、ご苦労さん」
「黒豆まだかかりそうだね。私伊達巻きやっておくよ」
ばたばたとキッチンの周りで忙しなく働くニールと
テーブルの上には料理の詰められたタッパーやラップのかかった皿などが並んでいる
今日は大晦日。そしてニールとはおせち料理づくりの真っ最中だ
クリスマスの後かたづけはライルの仕事である代わりに、大晦日のおせちはニールとが作ることになっている
先日のクリスマスの一件もあってか、ニールは年末から正月までの休みを長めに取ったという
大掃除は先日のうちに済ませてあるので、このおせちづくりが終わればいよいよ年越しだ
「二人とも、注連縄と門松つけてきたぞ」
そんな中、ひょっこりとライルが顔を出した。
暇を持て余していたので、正月飾りだけでもやっておくといって先ほどまで作業していた次第だ
「ありがとう、ライル」
「そっちはどうだ?」
「私の伊達巻きも今から焼きにかかるし、ニールはどう?」
「ああ、もうすぐ終わるぜ。いい具合に煮えてきた」
うん、とは嬉しそうに頷き、
「これ終わったらお蕎麦茹でるね」
楽しそうにフライパンを火にかけた







「はー、終わった終わったー」
作ったおせちを冷蔵庫にしまい、後かたづけもして3人は一息つく
「今年もこれで終わりだな」
「ああ。とりあえずお疲れさまって事で――」
手を合わせ、声をそろえる
『いただきます』
3人は茹で上がった蕎麦を食べ始めた
「うーん、大晦日はやっぱこれだねえ」
「毎年恒例だよな」
「いいじゃねえか。風情があって」
「……にしても、ちょっと茹ですぎたかな?」
コタツ机の上に鎮座している大きなザルには、結構な量の蕎麦が盛られている
「まあ、食べるだろ。3人揃ってるし」
「そうだな。もいるし」
「私そんなに食べないよー」
「何言ってんだ。
クリスマスの時『ヤケ食いだー!』とか言って鍋半分以上食ったのは誰だ?」
「そ、それは……」
「……そんなに食ったのか、
「だ、だって演奏するとすごいお腹空くんだもん!」
「あの日は休みだっただろーが」
「うう……いいもん、動きまくって燃焼してやるから。
むしろ去年より痩せてやる!!」
「計画倒れしないようにな」
「むっ」
意気込むに、ライルが冷静に釘を差す
「ていうか、そんなに痩せたいなら俺が手伝ってやるぜ。
……色々と、な」
「ちょっ……ニール!」
にやりと楽しそうな、不適な笑みを浮かべるニールには慌てて手を振る
「案外効率的に痩せられるんじゃないか?」
「ライルっ!!」
の声に被って、どこからかゴーン……と低い鐘の音が鳴り響いた
「あ……」
「除夜の鐘、だな」
「あと少しで新年か……」
箸を進める速度を落として、3人はしばし除夜の鐘に聞き入る
「……今年も、いろいろあったけど楽しかったね」
「ライルの記事も評価されたし」
の演奏会もうまくいったし」
『ニールはクリスマスに補習入れるし』
楽しそうにハモるとライルに、ニールは軽く咳払いをする
「あのなあ、一応俺んとこの弓道部全国いったんだが」
「そうだっけ?」
「夏休みに遠征行ったじゃねえか」
「あー、そういえば」
ライルとが笑いあっていると、テレビのスピーカーから盛大な歓声と拍手が聞こえてきた
「おっ、年明けたみたいだな」
「あ、じゃあ……」
す、とコタツから出て、はニールとライルの正面に正座すると、丁寧に三つ指をついて頭を下げた
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
冗談ではなく、は毎年本気でこれをやる
親の教育の賜物……というべきか、外でのの完璧な礼儀作法は社会に出てからますます磨きがかかっている
だが、20年あまりのつきあいは伊達じゃない。
慣れた様子でニールとライルもコタツに入ったまま、頭を下げる
「こちらこそ。今年もよろしくな、。」
二人が頭を上げるのを見計らって、は素早くコタツに戻る
「んにゃー、コタツやっぱあったかい。」
「人類の宝だよな」
「それでもってみかんが付き物?」
「そうだな」
3人で笑いあって、年越しの特番を見る。
お笑い芸人が無茶する番組や、一年を振り返るニュース番組。ヒットしたアーティストを特集する音楽番組……
「――あ、」
不意に、が思い出したように席を立った
?」
すぐに戻ってきたは、手に何やら封筒を握っている
「これ、私からのお年玉ね」
あー、さぶ。と三度コタツに潜り、ニールとライルにそれぞれ封筒の中身を渡す
「新春音楽祭?」
「今度のステージのチケットだよ。よかったら見に来て
その日にちなら2人とも大丈夫でしょ?」
「ああ。サンキュ、
「この時間だと……夕方には終わるな。
だったらその後どっかで晩飯食べていかないか?」
「あ、それ賛成!
よーし、私先輩達にお年玉せびってごちそう食べる!」
「うわ、なんて図々しいヤツ」
「まあ、折角だしここは奮発して少し贅沢しても罰は当たらないだろう」
「お、兄さんの奢りか?」
「んなわけあるか。割り勘に決まってるだろ」
「でも楽しみだなー。私、良さそうなお店探しておくよ」
はもうやる気満々で、候補の店をぶつぶつ呟いている
ニールとライルは顔を見合わせて微苦笑した
「なあ、」
「ん?」
「とりあえずさ、今日のこと先に考えねえか?」
「何かあったっけ?」
はきょとんとした表情で訊ねる
「何かあるっつーか、正月だろ?
まずは初詣に行かないとな」
「あ、」
は本気で忘れていたらしく、一瞬呆気にとられて、
「そうだったね。初詣行かなきゃ」
照れたように微笑んだ
「じゃあ、朝になったら神社に行こうね」
「そうだな。早めに行ってそれから朝飯にするか」
「俺はそれまで少し寝るかな……」
「ライル、眠そうだね」
「ちょっと調べものしててな……」
ふあ、とライルは手を口元にやって欠伸を噛み殺す
「それなら、私も家戻って準備しようかな。
そうだ、振り袖着ようっと!」
「振り袖?また随分懐かしい物を……」
「いいじゃない。たまには」
「じゃあ、俺は後かたづけでもしておくか」
またあとでな、と各々の部屋へ向かう





 来年も、再来年も、ずっと一緒に過ごしましょう。
 今年があなたにとって良い一年でありますように――――






おまけ

「ニール、ライル、おまたせ」
「おっ。綺麗だな、
「いい着物でしょ?久しぶりだからちょっと時間かかっちゃったんだけど……どうかな?」
「よく似合ってるぜ。は可愛いからな。」
「兄さん、新年早々口説くなよ……いや、これは惚気か」
ライルはまだどこか寝たりなさそうだ
「それじゃあ、行こうか」
2人の真ん中に立ち、は両の手を繋ぐと足早に歩き出した
「おいおい、そう焦らなくても……」
「善は急げ!おめでたいことなんだし、早めに行こうよ」
仕方ないな、と2人は小走りでの隣に並ぶ



「あ、そういえばこれって……」
両隣のニールとライルを見て、は不意に零した
「所謂『両手に花』ってやつ?」
「いや、それは色々と違うだろ……」




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 あとがき
ちゃんと年末に合わせて書き上げたぜ!ていうか今日書いた。
一応クリスマスネタの続きで書いてます。
ニールがどうしてもヘタれてしまうのは何でだろうOTL
ライルが最近好き。こないだので狙い撃たれた。
ハイテンションヒロインいいでつね。
みなさん良いお年をー(^^)/~~
 2008 12 31  水無月