「はぁ……」
中庭のベンチに腰掛け、大きくため息をつく。
朝夕の風は冷たいが、昼の日差しは暖かい。
そんな中は、世にも珍しい――黒い帽子、黒いドレスに黒いマント、黒いパンプス――
全身黒ずくめの姿で座り込んでいた。所謂、魔女である。
「何やってんだ?」
と、不意に背後から声をかけられる
「ディアッカ」
「何やってんだ、こんなところで。
しかも……なんだ?その格好」
「……ふかーい、わけがあるのよ。いろいろと」
「ふーん?」
一見、興味のなさそうな返答。
けれどそれは"話を聞いてやる"という言葉の裏返しで、は小さく息をついて話を続けた。
「そもそも私だってこんな格好したくてしてるわけじゃないのよ」
「でもしてるよな。しかも意外と似合ってる」
ディアッカは頭のてっぺんからつま先まで、まじまじとを見つめる。
よく見れば目元や唇もそれらしいメイクがしてあって、彼女の気の入りようが伺えるが、
「全部やってもらった……ってかやられたの」
きっぱりと、断言した。
「そもそも私が普段化粧しないの知ってるでしょう?」
「そうだよなぁ。彼氏(オレ)と会うときですらすっぴん。
家だろうとその辺は気を遣ってほしい男心丸無視でな」
う、とは気まずそうに視線をそらす。
「余計なことは言わんでいい。
……で、まぁ昨日ルナとメイリンが遊びに来て……」
『ええ、プラントでは大盛り上がりですよ。
みんな自分の特長を最大に生かしてきますから、すごく個性的で』
『最近では童話をモチーフにしたり、ちっちゃい子が妖精の格好したりね』
ずず、とコーヒーを啜り、は興味深そうに身を乗り出す。
『オーブではハロウィンはそこまで盛り上がらないからなぁ。
なるほど、個性を生かす、か。プラントらしくて楽しそうだ』
リビングの一角で、とルナマ、メイリンは翌日のハロウィンについて話を咲かせていた。
『ふー、やっと終わったぁー』
『あらあら。楽しそうにお話されてますわね』
そこに、執務を終えたカガリとラクスも合流。そして――――
『では、私たちも参加いたしませんか?』
ルナマとメイリンの話を聞き、以上に興味を持ってしまったラクスが、そう提案した
その結果――プラント育ちのルナマとメイリンは嬉々として参加。カガリも、プラントの文化に触れてみたい、と息抜きついでにこちらも参加。発案者のラクスは言うまでもなく、
そしては――――
「私は、似合わないし、ガラじゃないからいい、って言ったんだけど……まぁ、その、ラクスが……」
そこから先は言わなかったが、推して知るべし。
あれは一度見たらトラウマになる。
「なるほど。理由はわかった。その格好のな。
で、何でこんなところに要るんだ?」
「出し物は日が落ちてからになるから、それまでは各自待機なんだけど……
みんなの所にいるとイジられるから逃げてきた」
つーかもう2,3人には。とは愚痴をこぼす。
「ちなみに、イジったのは?
お前が逃げ出す相手といったら……」
「……ムゥさんとバルトフェルトさん。」
「あー、なるほど」
その絵は容易に想像できた。
「ま、普段なかなか遊べないキャラだからな、お前。
イジり甲斐あると思われたんだろ」
「……はぁ、私の貴重且つ平穏な休みを返してくれ」
がっくりとはうなだれる。
「……だったら、俺の泊まってる部屋、来るか?」
え?と顔を上げ、は問い返す。
「いいの?」
「ああ、今はイザークも出てるし、夜までかくまってやるくらいなら」
「わ、それは嬉しい。お言葉に甘えさせてもらおう」
善は急げ、とばかりには立ち上がり、ディアッカもそれに倣った。
車で数分のホテルに着く。
部屋に入ると、はほっと息をついて、ベッドに腰掛けた。
「こっちはずいぶんと静か」
「夜はけっこう来るらしいぜ。
ここからだとよく見えそうだしな」
「うあー……気が滅入る」
「ま、がんばってこい。あの人相手じゃどうにもな……」
「んー、ありがとう。
終わったらまた寄っていい?お土産も持ってくる」
「ああ、」
そのままおもむろに抱き寄せて、ディアッカはに口付けた。
「期待してるぜ?可愛い魔女さん」
不意打ちでからかわれて、は顔を真っ赤にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
宣告したっけ?まぁいいや。
ガンダムSEEDよりディアッカです。グレイト。
一応細くしますと、SEED DESTINY終了後です。
イジりまくろうかと思いましたが、やめました。
ノリで行けば案外書けますね。
どうでもいいですが、最初はこの女性陣でアスランをイジメに行くという話しでした(笑
2009 11 8 水無月