Web拍手お礼夢小説  「桜 
Cherry blossoms」   (ハルヒ/キョン)




        3月――高校一年目の課程が修了し、特にするべきこともなくなるのんびりとした時期。
       そんな時でも、この同好会ですらない謎の団体は活動を止めない。
       ――とはいっても、この団体が活動らしい活動をしたことなどほとんど無いが。

       「どーもー」
       年度末を数日後に控えたある日の放課後。 間延びした声と共にヤツが入ってきた。
       「あれ?ハルヒは?」
       鞄を下ろしながら訊ねてくる。 おそらく、この部屋にいる全員――俺と長門に対してだろう。
       「掃除当番だ。 年度末だし、少し時間が掛かるんじゃないのか?」
       「そ。 じゃあまた今度にしようかな。」
       そう言ってさっぱりとした性格に見せているが、コイツの腹黒さは底が知れない。
       ……現に今も、僅かに口角が上がっている。
       「何かあったのか?」
       「んー?べっつにー」
       色んな意味で、この団の中で一番恐ろしいヤツだ……


       「――ねぇキョン」
       「何だ」
       「桜、咲かないね。」
       唐突に何だ
       「……まぁ、暖かくなったとはいえ、まだ3月だしな。もう暫く掛かるだろ。」
       窓から見える桜の木は桃色の蕾を大量に見せているが、それが開く気配はない。
       「そだね。 ………でも、時期に咲くと思うよ?」
       そう言ってにこりと微笑む。
       時折、この微笑みの裏には恐ろしいことが隠れている。
       「何の根拠があって……「みんなー!朗報よー!!」」
       話を遮ったのは、この団体の団長にして俺の悩みの種、閻魔大王(命名俺)
       コイツの朗報が朗報だった試しがあるのか……とため息をつくと、隣の女はくすりと笑った。
       「何がおかしいんだ」
       「ほら、あれ」
       その指さす先は、ハルヒの腕――その中にある雑誌――だった。
       「レジャーガイド……花見特集……?」
       「ね、言ったとおりでしょう?」
       ふふっ、と楽しそうに笑うコイツを気にもとめず、ハルヒは花見の計画を語り出した。
       やがて後から古泉、続いて朝比奈さんも入ってきて、室内はいつものようにニギヤカになる。


       「ね、キョン」
       「?」
       「桜が咲いたらさ……一緒にお散歩しない?」
       「散歩?」
       また唐突に何を……
       「……ううん、何でもない」
       一瞬照れたように顔を背けた。
       その仕草が新鮮で、可愛らしく思える。
       「……そうだな。そのうちまたハルヒが市内探索でもしだすだろう。
       そのときにでも一緒に歩くか?」
       「――ん。ありがとう。……約束だよ。」
       「あぁ。約束だ」
       こっそり、ゆるりと小指を引っかける。
       交した約束が待ち遠しく感じて、もう一度まだ蕾の桜に目をやる。

       ――偶には、早く咲いてくれよ。



       前回の古泉と同じヒロインです。ハルヒの行動はもう何となく読めています。

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