Web拍手お礼夢小説  「桜 
Cherry blossoms」   (Fate/アーチャー)




        平凡な授業中の屋上
       日頃人の出入りが少ない割にはそこそこ整備されており、授業をサボるにはもってこいの場所だ。
        色んな意味で高校というのは気が楽だ。
       ……とは言っても、それは暫くすればの話。
       初めのうちは単位を稼ぐため、基本的に一年生は年中無休で授業に出る。
        サボったり出来る余裕があるのは、学年が上がってからの話なのだが……

       「――まったく、君という人は……」
        屋上の片隅、隣接するように立つ桜の木――否、この木に隣接するように校舎が建てられたのだろう。
       青空が見えなくなるほどに咲き乱れ重なった桜の下で、仰向けになりすやすやと眠る一人の少女。

        我がマスターである凛と、セイバーのマスター……衛宮士郎の友人。
       そして………
       「――ん……」
       ふいに身動ぎ、少女はゆっくりと瞼を持ち上げる。
       「……んん……」
       「目が覚めたのか?」
       「……アーチャー……」
       寝起きの少女は大きく欠伸をし、固まった全身を伸ばした。
       「おはよ、アーチャー……」
       「あぁ。だが、もうその時間帯ではないな。」
       「今、何時間目?」
       「4時間目だ。あと半刻もすれば昼食の時間になる。」
       「そっか……今日のお昼は?」
       まだどこか寝ぼけた表情の彼女と、他愛のない質疑応答を繰り返す。
       「……サンドウィッチだ。」
       苦笑を漏らしながら答え、そっと彼女の艶やかな髪に手を伸ばす。
       ――正確には、その中の薄紅色へ。
       「アーチャー……?」
       ゆっくりと梳いてやれば、薄紅色の花びらが一片、はらりと落ちた。
       「君は曲がりなりにも女子高生ではないのか?」
       「どーゆーこと?」
       「偶には自分の身なりに気を遣ったり、授業に出てみたらどうかね?」
       背中に付いた埃を払ってやると、擽ったそうに微笑う。
       「父親みたいなこと言わないの。ホントにそうなっちゃうよ?」
       「そうか。ならば控えておこう。」
       「ふふっ。そうしなよ。……それに――」
       話しながら、ゆっくりと腰を上げて隣に並ぶ。
       「私どうせ人間じゃないし。大したこと無いでしょ?
       だったら、ここでアーチャーと話してる方が楽しいもん。」
       そう言ってにこりと笑う。彼女は――
       
        かつて、自分の“マスター”として呼ばれた“英霊”

       「――なーに考えてるの?」
       「いや、大したことではない。」
       「ふーん……なぁに?」
       「君の寝起きを見るのも悪くないとな。」
       「何それ……」
       「君の寝起きの表情はなかなかおもしろいぞ?ある意味で百面相だ。」
       からかうように手を振ってみせると、むぅ、と眉根を寄せる。
       「嫌みっぷりが凛に似てきたわねぇ……」
       「それに、君とこうして話すのはいい時間つぶしになる。」
       「そうならそうと最初っから素直に言えばいいのに。」
       くすくすと笑う彼女に見えないよう、こっそりため息をつく。

       『君の寝顔に、桜が似合いすぎている』と――
       素直に言えたら、どれほど楽なのだろうか……


       儚い想いを舞い落ちる花びらに重ね、その奥の少女を見つめた。



       サボタージュのヒロイン。授業中は屋上で見張りのアーチャー。何だかんだ言っていい感じです。

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