Web拍手お礼夢小説 「桜 ―Cherry blossoms―」 (ロックマンX/ゼロ)
「ゼロ!」
任務後のメンテナンスを終えるやいなや、そいつは小走りに駆け寄ってきた。
ひらひらとはためく白衣が眩しい。
「これから何か予定は?」
「? 特にないが……何故だ?」
「買い出しに行きたいの。付いてきてくれる?」
「わかった。少し待っていろ」
用意をするため、ラボへと引き返す。
このハンターベースで唯一の科学者……人間である彼女は、定期的に買い出しに行く。
だが、武装しているとはいえ人間の身では危ない。
そのため、手の空いたハンターが交代で護衛を務めている。
買い出しのペースは一ヶ月おき。
なので、一度こなしたら約半年は回ってこないはず。なのだが………
「……たしか、先月も俺じゃなかったか……?」
ふと、そんなことを思い出す。
『レッドのことでちょっと調べたいことがあるんだ。悪いけど、代わりに行ってくれないかな?』
新入りハンターの少年の声が甦る。
「アクセルに変わってやれば良かったか……?」
だが、たかがこれしきのことであのやんちゃな少年を呼び出すのも手間だ。
そもそも、あれでもS級ハンターなので、いるかどうかすらわからない。
「……行くか」
ふ、と短く息をつき、二人乗りのライドチェイサーを用意する。
考えても仕方がない。そう自分に言い聞かせて。
「待たせたな」
「いいのよ。私も着替えたかったし。」
そう言ってふわりと微笑む彼女は、白衣からベージュを基としたカジュアルな服装に着替えていた。
シンプルな装飾が、彼女の整った顔立ちと落ち着いた雰囲気を引き立てている。
「――ゼロ、どうかした?」
「いや、何でもない。」
――見とれてしまった、などとは口に出せない。
「そう?ならいいけど……もしかして似合ってないとか?」
「そんなことはない………――よく似合っている。」
「え?」
おそらく語尾が聞き取れなかったのだろう。
聞き直してくる視線を適当に流し、ライドチェイサーにまたがる。
「行くぞ。さっさと乗れ」
彼女が乗り込んだ感触を背中で感じ、アクセルを踏み込む。
ひゅお、と風が吹き抜ける。
「すっかり春ね。」
不意に耳元で囁く声。
「――そうだな」
「不思議ね……花も、虫も、小鳥たちも……誰一人顔を出していないのに……
この風が、春だと教えてくれる……」
詠うように、穏やかな声で語る。
その声がとても心地よく感じる。
「――ゼロ、」
「何だ?」
「いつの日かこの大地が甦り、春が来て、花が咲いたら……
お花見、しない?」
「……そうだな」
自然と肯定の返事が漏れる。
「珍しいのね。貴方がこんなことに肯定するなんて。」
「それは、可笑しいという意味か?」
「まさか。むしろ嬉しいくらい。」
ふふ、と微笑む彼女が、振り向いた刹那、一輪の花のように見えた。
気高く、強く、凛と美しい花
――いつの日か、か
先程交した約束が、そう遠くない未来のように思えた。
風を切る二人の背中で、薄紅色の花弁が一片、春の空に舞い上がった
多分ゼロは鈍感です。アクセルやエイリアがきっと裏で手を回していますよ。
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