Web拍手お礼夢小説 「雨の日 ―someday in the rain―」 (Missing/俊也)
「あーあ……降ってきた……」
昇降口前に立ちつくし、灰色の空に向かって呟く。
「やっぱり2分の1の確率じゃ外れかぁ……」
家までの道中、歩くのは大した距離じゃないけれど、それでも濡れるのは嫌だ。
「稜子みたいに寮に入っておけば良かった……」
ぽつりと呟く。
「なーんて言ったら……」
「木戸野にどやされるぞ。」
「そうそう、亜紀に………――って、」
返ってくることのない返事に、驚き背後を振り返る。
「俊也!」
背の高い、そして珍しく制服を着ている幼馴染みが立っていた。
「何やってるんだ、こんなところで。」
そう問いかける俊也の表情は、呆れたような困ったような、形容しがたいものだった。
「ちょっと思案中。俊也は?」
「近藤と空目の講師をしていた。」
「へぇ……でも、武巳はともかく何で恭まで?」
「あいつここしばらく授業出てないだろ?このままじゃ留年の可能性もでてくる。」
「なるほど。俊也としても、私らからしてもそれは困るしね。」
状況を想像してみて、くすりと笑みを漏らす。
武巳も苦労してるんだな、と思い、一人心の中で慰めてやった。
「で、お前は何を考えていたんだ?」
「んー?これからどうしようかなーって。」
「どういうことだ?」
「傘忘れて来ちゃったの。
別にバス停からの距離は大したこと無いんだけど、なんか走るのも億劫で。」
「おいおい……」
「稜子みたく寮生だったら良かったなーとか、2分の1の確率に賭けなきゃ良かったなーとか、色々考えてた。」
だけどそんなことを亜紀にでも聞かれたりしたら、と思ったときだった。
「そしたら俊也が立ってるんだもん。ビックリしちゃった。」
そう言って微笑うと、俊也は呆れにもとれるため息をついた。
「――で、結局どうするんだ?」
「んー……俊也はどうするの?」
逆に問いかけると、俊也は手に持っていたものを見せた。
「俺は傘を持ってるからな。普通にこのまま帰る。」
「私は入れてってくれないの?」
悪戯っぽい表情で問いかけると、俊也は無言で傘を開いた。
そして、
「……ほら、入れよ。」
小さく、呟くように、その中へと手招きする。
「いいの?」
「あぁ」
短く答え、軽くため息をつく。
「どうせそのつもりだったんだろ?
ほっといてお前が風邪でもひいたら俺の責任になる。
――それに、置いていく理由もないしな。」
「さすが。良く分かってるね。」
「何年のつきあいだと思ってるんだ。」
「それ、時々恭にも言ってるよ?」
「……明日の授業は――」
「こら、誤魔化すな。」
ぱっと手から傘を奪い取り、大股で数歩進む。
「おい!」
「ほーら、早くしないと俊也が風邪ひいちゃうよー?」
「おい、待てって!」
鮮やかに舞うコートの裾が雨を切る。
――西の空から虹が架かっていた。
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拍手お礼第2弾は「Missing」より村神俊也です。
寡黙だけど熱い……そういうのが好きなんですw
ちなみにヒロインは文芸部の一員で俊也と空目の幼馴染みってことで。
ちょっとかわってるけどほのぼのとしたあの部室の感じは好きです。
もし入部できるのならみんなのことは下の名前で呼びたいというどうでもイイ願望アリ。
では、拍手どうも有難うございました!