「……ゴメンね、準」
ソファに横たわり、は弱々しい声で謝る
「すまないと思うならさっさと治せ」
「うん……」
口元まで布団を引き上げ、小さく頷く


 がやってきたのは1時間ほど前。
突然の雨に、慌てて準の部屋に駆け込んできた
「まったく……折り畳み傘くらい携帯しておけ」
「そんなこと言ったって……学園内だし、いきなりの通り雨だったから……」
熱で赤く染まった顔のまま、口を尖らせる
「――あ、体温計鳴った」
と、それもつかの間、は懐を探る
「いくつだ?」
「ん……37度7分。思ったより低い」
「薬も飲んだしな。直に治るだろ」
体温計をしまい、準はの方にそう、と手を伸ばす
「今日は泊まっていけ」
「いいの?」
「お前くらい何とかなる」
「じゃあ……ありがとう」
頭を優しくなでられる感触に、は幸せそうに微笑む

すると、準が何か思いついたのか、の枕元に腰掛けた
「どうしたの?」
、少し体を起こせ」
「? うん」
不思議に思いつつもは言われたとおりにする
「よし。――ほら、横になれ」
言いながら、準は自分の膝を示す
「へ?」
「頭を乗せろ。その方が楽だろ」
 所謂膝枕。
樹里は思わず赤くなるが、熱のせいか、気づかれてはいない
「おい、早くしろ」
「う、うん……」
ゆっくりと体を横たえ、頭を準の膝におろす
「……高い」
「文句を言うな」
「でも……暖かいよ」
心地よい温度には自然とその身を預ける
「寝ても良いかな……?」
「好きにしろ」
やがて、静かな寝息を立て始めたを、準は幸せそうに見つめる
雨に包まれた部屋で、穏やかに時間が流れていった