Web拍手お礼夢小説 「雨の日 ―someday in the rain―」 (Fate/アーチャー)
「アーチャー?」
赤い背中に思わず声をかけた。
「君か」
「どうしたの?こんな雨の中……」
「買い出しだ。凛に紅茶を頼まれてな。」
「サーヴァントも大変ね。」
「マスターがあの性格だからな。」
「ふふっ。凛が聞いたら怒るんじゃない?」
「大丈夫だろう。――君が話さなければな。」
整った顔に笑みを浮かべ、す、とこちらに手が伸ばされる。
「それより、君こそこんな雨の日に何をしているんだ?」
髪の毛についたゴミを取りながらさりげなく話題を変えてくる。
いつものことながら、その仕草の一つ一つをカッコイイと思ってしまう。
「友達のデートに付き合ってたの。どうしてもって頼まれちゃって。」
「……そうか」
一瞬、アーチャーの眉間に皺が刻まれたように見えた。
「アーチャー……どうかした?」
「いや……何でもない。気にするな。」
「そう?」
隣に立つ男を見上げると、銀がかった白い髪が濡れているのに気づく。
「――ね、ちょっとかがんで?」
「?」
怪訝そうな顔をしながらも、アーチャーは軽く膝を折る。
「よいしょっと……」
「一体何を……?」
ちらりと視線を上げれば、彼女の細い腕が頭上に伸ばされている。
「……これでよし、っと。」
呟きと共に、白い布がひらりと舞い降りる。
「綺麗な髪ね、ホント。濡れても綺麗。」
その言葉に、自分の髪を拭いてくれたのだと気づく。
「君は……」
思わず言葉が出かかった。
「なあに?」
「いや……何でもない。」
「……そう」
一瞬、その表情に影が差す。
「どうかしたのか?」
訊ねると、彼女はやや躊躇いがちに言葉を紡いだ。
「んー……アーチャーって、いつも自分のこと話さないな、と思ってさ。」
呟くような口調と寂しげな表情に、気まずい感じを憶える。
「あ、でもムリに聞くようなことはしないから。」
先程とはうってかわって明るい口調。
相変わらず表情がよく変わる、と思わず笑みがこぼれる。
「――ところで、」
不意に話題が切り替えられる。
「アーチャー、傘持ってないの?」
「あ、あぁ。」
唐突に問われ、一瞬戸惑ってしまった。
「よかったらさ、私の傘入ってかない?」
「良いのか?」
「もちろん。」
ふわりと微笑み、傘が開かれる。
その拍子にふと向かいの店が目に入った。
「さ、帰ろ?」
促す彼女の手から、そっと傘を取る。
「アーチャー?」
「そう急ぐこともあるまい。――少し寄り道をしてもかまわないか?」
「え?あ、うん。」
さりげなく手を取り、傘の中へと引き入れる。
「そこに喫茶店がある。
偶には外の店で茶を飲むのも良いだろう?」
――それは、ささやかなデートのお誘い。
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Web拍手お礼「雨の日」です。副題は「涼宮ハルヒの憂鬱」より。
最近急激にハマりだした「Fate」よりアーチャーさん。
意外と可愛いところもあるんですよね。
アニメとコミックのみなのでちょっとわからない点も多いですが………
こんな風にデートに誘われてみるのもたまにはイイですよね?